「アーティストの所属先を選ぶには?プロダクション・エージェント・パートナーの違いとは」
- MAP Re:
- 8月5日
- 読了時間: 8分
更新日:8月31日

こんにちは、阿部です。
私は長年、大手レコード会社にてレーベルプロモーションとマネジメントプロダクションの両方を兼務し、アーティストの“生業としての音楽”を支える「音楽ビジネスのゼネラリスト」として活動してきました。
アーティスト・マネジメントの仕事は、アーティストのすべての活動に関わりながら、本人の目指す方向と、プロダクションの目的を両立させていくものです。音源リリースの計画から、コンサートの実施、アーティストの「見せ方」を設計するブランディングまで、幅広く手がけてきました。
一方、レーベルは音源(=作品)を世の中に届け、ヒットにつなげるための戦略を練り、宣伝・プロモーションを担います。また、夏の定番イベントとなった「a-nation」では、立ち上げプロデューサーとして企画運営に関わらせていただきました。
その後、独立し、アーティストサポートや地域発信型野外フェス《one+nation music circus》などの音楽イベント運営を行っています。
この記事では、これまでの経験を通して得た知見をもとに、「アーティストの所属先を選ぶには?プロダクション・エージェント・パートナーの違いとは」についてお伝えしていきます。
この記事は、
・現在、音楽活動をされているアーティストの方
・すでに活動しているが、将来や方向性に不安を感じている
・SNSやプロモーションなど「音楽以外」の要素に悩んでいる
・メジャー or インディー問わず、“生業としての音楽”を真剣に考えている人
・音楽大学や専門学校に通っている学生のかた
・本質的なアーティスト像を学びたいと感じている
などに向けてお話をさせていただいています。
アーティストが音楽活動をスケールさせていくために、音楽プロダクションに所属する。
これは、現在の日本においてもっとも一般的な手段と言えるでしょう。しかし「主流」と言っても、実際には「これしか選択肢がない」と思われているのが現状ではないでしょうか?
一方、海外に目を向けると、アーティストは「エージェント」という存在と契約し、必要な専門家やチームを自ら選びながら活動を展開していくスタイルが主流です。日本でも近年、少しずつこの形が広まりつつあるように感じます。
ですがここで、あらためて考えてみたいのが、
「プロダクション」と「エージェント」は、そもそも何が違うのか?
という点です。
実はこの違いを、明確に説明できるアーティストや関係者は、意外と多くありません。まずは、この2つを説明しましょう。
◯プロダクション(Production)
<意味・役割>
プロダクションは、アーティストと専属契約を結び、活動全般を包括的にマネジメントする組織です。音楽活動はもちろん、テレビ・映画・舞台など他メディアへの展開も視野に入れながら、スケジュール管理や方針決定など、アーティストの「表現」「露出」の両面を統括します。「芸能事務所」「音楽事務所」と呼ばれることもあります。
<特徴>
専属契約型でアーティストを「所属させる」スタイル
所属=囲い込む構造であり、外部との自由な取引は難しくなることが多い
プロダクションが金銭的な投資やリスクを担う代わりに、主導権を握る
スケジュールや活動方針に関して、都度“承認”や“確認”が必要になる
一定のサポートやチャンスを得られる反面、自由度が制限されやすい
アーティストが未経験の段階からサポートを受けられる点や、業界との太いパイプを活用できる点は大きなメリットです。一方で、自らの判断で動く自由が制限されるため、「何を優先したいか?」が重要な判断軸となります。
◯エージェント(Agent)
< 意味・役割>
エージェントは、アーティストやクリエイターが主体的に活動しながら、その補助として「仕事の仲介や契約交渉」などを担う存在です。
営業や案件獲得、契約条件の交渉などを代行・サポートし、基本的には「請負契約」という形で、案件ごとに関係を結ぶスタイルが一般的です。
< 特徴>
アーティスト自身に主導権がある(活動方針や表現内容も自分で決定)
専属契約ではなく、案件ごとの個別契約が基本。自由度が高く、「束縛」は少ない。
スタッフもアーティストもそれぞれ自立した個人として関係性を築く
フリーランス型アーティストが増える現代に合った、柔軟な形態。
エージェント型では、
アーティストが自分のブランドや価値を理解し、意思決定できる力が求められます。だからこそ、マネジメントを“丸投げ”するのではなく、「何を任せ、何を自分で担うか」を明確にできる人には、非常に自由で可能性のある選択肢です。
以上のように、プロダクションとエージェントは、アーティストとの関係性において大きく異なるスタンスを持っています。
簡単にまとめると、
プロダクション型は、アーティストがある程度「依存」できる形態。
マネジメントだけでなく、プロデュース的な側面も含めて任せられる部分が多く、活動における支援体制が整っています。
(※ 具体的な関与度やスタイルはプロダクションごとに異なります)
エージェント型は、アーティスト自身が主体となり、自立した立場で活動していくスタイル。いわば「セルフプロデュース型」とも言え、自分自身の判断力とビジョンが求められます。
力関係という点で見ると、
プロダクション型では、プロダクション側に主導権があるのが一般的。
エージェント型では、アーティスト自身に主導権があるため、選択の自由度が高くなります。
あなたがこれからの音楽活動を考えるとき、「どのスタイルが、自分のビジョンや価値観に合っているのか?」という視点は、これからますます重要になります。
しかし、ここでひとつ注意したいポイントがあります。
それは、「自分が今、どのフェーズにいるのか?」という“現在地の認識”です。
たとえば、これから売れていこうとしている段階なのか?
あるいは、すでにある程度の実績や認知がある状態なのか?
この違いによって、最適な所属スタイルや関係性の築き方は大きく変わってきます。
そしてもう一つ、大切な視点を付け加えておきたいと思います。
それは、「どのスタイルに所属するか」以前に、アーティスト自身に“判断する力”が備わっているかどうかということです。
プロダクションであれ、エージェントであれ、どのような環境にいても、アーティストには日々さまざまな意見・助言・情報が集まります。ときには方向性の提案や、リスクのある選択を迫られることもあるでしょう。
そんなとき、
・何でも鵜呑みにすることでもなく
・自分の意見をただ押し通すことでもなく
他者の意見や情報を冷静に受け止めた上で、自分で判断を下せる資質が求められます。
つまり、所属のスタイルを選ぶ前に、まず必要なのは「自分自身が、判断できる力を持っているか?」という問いかけです。
所属先はあくまで「手段」であって、「答え」ではありません。どこにいても、自分の人生と音楽の舵を取るのは、あなた自身です。
そして、ここであまり馴染みがないかもしれませんが、私たちが提唱している「パートナー(Partner)」という形態をご紹介します。
パートナー(Partner)
<意味・役割>
アーティストと対等な立場で、共に活動を創り上げていく協働者です。
いわゆる「事務所/契約者」という上下関係ではなく、対等な関係性を重視します。
アーティストのコンセプトやビジョンに共感し、「共に叶える」というスタンスです。
<特徴>
長期的な信頼関係を土台とし、アーティストの自立性を尊重しつつ、必要なタイミングで適切な支援を行います。管理ではなく、対話と協働を重視するスタイルです。
<向いているタイプ>
自分の表現を主体的に考えたいアーティスト。
一方的に「管理」されるのではなく、対等に協働したい人
信頼関係とコミュニケーションを大切にしたい人
このパートナーシップは、「自分のビジョンを大切にしながら、安心して支え合える関係」を求めるアーティストにとって、とても自然で新しい所属のあり方として考えています。
*まとめると
それぞれの形態には、アーティストの活動スタイルや価値観、そして現在の状況によって向き・不向きがあります。何より大切なのは、自分のビジョンや人生に合った関係性を見極めることです。
とはいえ、音楽活動をこれから始める、あるいは始めたばかりのアーティストにとっては、まずは「パートナー」という形態を導入口として選び、そこから次のステップを見据えることが最も現実的で有効だと私は考えています。
そして、それこそが私たちの存在意義でもあります。
私は現在、アーティストと共に創り上げるパートナーシップ型の「Re:scale music artist partners(= Re:MAP)」を運営しています。
これまで音楽業界の第一線で培ってきた経験や実績を活かし、これからの時代に必要な音楽スキルの習得、継続できる活動設計、さらにマネタイズの仕組みづくりまでを
アーティスト一人ひとりに寄り添い、伴走する支援プログラムです。
目的を共に描き、共に叶えていく。そんな仲間として、一緒に歩んでみませんか?
ご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。一緒にあなたの音楽人生における次のステージを創りましょう。
Re:scale music artist partners(=Re:MAP)



コメント